Abeta(1-42)のHFIP処理について

重光研究員が筆頭著者の論文(Nuclear magnetic resonance evidence for the dimer formation of beta amyloid peptide 1–42 in 1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol.)がANAL BIOCHEM誌に受理されました。

  • Shigemitsu, Y., Iwaya, N., Goda, N., Matsuzaki, M., Abe., Y., Narita, A., Tenno, T., Hoshi, M., and Hiroaki, H.* 2016, Nuclear magnetic resonance evidence for the dimer formation of beta amyloid peptide 1–42 in 1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol. Analytical Biochemistry, (2016) Accepted. DOI: 10.1016/j.ab.2015.12.021

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概要

  • bアミロイドペプチド (Ab)は39~43アミノ酸残基からなるペプチドで、アルツハイマー病(AD)発症の原因物質の1つと考えられている。アミロイド線維の形成は重合核(シード)依存性の重合反応であると考えられており、Ab (1-42)の単量体試料への極少量のシードの予期せぬ混入は、in vitroでの重合実験の再現性に大きな影響を与え、Abの研究を困難にしている。
  • HFIP (1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol)は強力なaヘリックス誘導性の有機溶媒である。HFIPによるプレ処理は、Abの重合核を脱重合し、完全に単量体化すると信じられてきた。しかし、一部のシードリッチなAb、例えば大腸菌組換え発現により調製したAbで、HFIP は必ずしも完璧な脱重合試薬ではないことが明らかになった。今回、我々は、15N標識したAb (1-42)を測定試料とし、HFIP中でHSQCスペクトルの濃度依存性を確かめた。Ab (1-42)は濃度依存的にaヘリックスに富んだ二量体を形成し、そのおよその解離定数(Kd)は0.1mMであった。また、NMR実験により二量体のインタフェースを決定した。
  • 多くの論文で、HFIP処理は1mMなどの濃い濃度の条件が使われている。またHFIP処理後の有機溶媒の除去について、HFIPを凍結乾燥で除く方法と、SpeedVacで除去する方法の両者が混在している。しかし凍結乾燥の場合、前述のKdより濃い条件で行うHFIP単量体化処理には、注意が必要である。SpeedVac濃縮の場合は、濃縮中にほぼ確実に全てが二量体化すると思われる。
  • 実際、異なるAb 濃度でHFIP(+凍結乾燥)処理した試料間で、チオフラビンアッセイによるアミロイド線維の形成速度に差が見られた。
Updated: 2016/01/07 — 21:11