廣明秀一

教授 廣明 秀一      [内線4535※]   (創薬科学研究館506号室)IMG_0675
名古屋大学大学院創薬科学研究科   (創薬科学研究科長・細胞生理学研究センター長)


廣明秀一(ひろあき ひでかず) 薬剤師・博士(薬学) 1965年生まれ 56歳

略歴

  • 昭和58年 私立栄光学園高等学校 卒業 31期
  • 昭和62年 大阪大学薬学部卒業
  • 平成1年 大阪大学薬学研究科博士前期課程修了
  • 平成4年 大阪大学薬学研究科博士後期課程修了 博士(薬学)
  • 平成4年 日本ロシュ株式会社 (平成7年)
  • F Hoffman La Roche研究所(スイス、バーゼル)出向
  • 平成8年 生物分子工学研究所
  • 平成13年 横浜市立大学大学院総合理学研究科 助教授
  • 平成19年 神戸大学大学院医学系研究科 特命教授(構造生物学分野)
  • 平成23年 名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻
  • 平成24年 名古屋大学大学院創薬科学研究科基盤創薬学専攻(構造分子薬理学分野)
  • 平成25年~ 名古屋大学細胞生理学研究センター長を兼務
  • 平成26年~ 名古屋大学学術研究・産学官連携推進本部副本部長を兼務・総長補佐
  • 平成26年~ 名古屋大学学術研究・ビジネス人材育成センター長を兼務
  • 令和2年~  創薬科学研究科・副研究科長
  • 令和3年~  創薬科学研究科・研究科長

電話 052-789-4535
Email:  hiroaki.hidekazu@f.mbox.名古屋大学

   (名古屋大学のところをnagoya-u.ac.jpに置き換えてご利用ください

 

教授からのメッセージ

 ブロックバスターを目指して

創薬の世界では、たった1品目で1年間に世界中で年商10億ドル(約1000億円)を超える新薬のことをブロックバスターと呼びます。多くのブロックバスターは、次の二つのカテゴリーのいずれかであるといわれています。(1)first-in-class、(2)best-in-class。Classとは、治療すべき疾病領域および作用機序(具体的には標的とするタンパク質)のことです。つまり、いままで誰も成功していなかった新規の創薬標的に効く薬を一番乗りで開発すること、それがfirst-in-classの大型新薬ということになります。構造分子薬理学分野では、タンパク質や核酸の立体構造を精密に解析・制御して、他にない新薬を作り出すことと、新薬を作り出すための新しい理論・方法論を開発することを、主に目指しています。

古い学問との決別と、新しい分野に踏み出す勇気を

さて、ここ数年、(論文の出版が追い付いていませんが)構造分子薬理学分野の研究は絶好調です。まず、医薬品ではなく、医薬品添加剤の分野で、全く新しいコンセプトのものを生み出すことができました。調べたかぎり、患者さんにそのまま投与可能なタンパク質製剤の凍結保存剤というものは、実用化されていません。構造分子薬理学分野のヒトゲノム由来天然変性タンパク質添加剤は、この新しい地平を切り拓く画期的な発明です。それから、6名の大学院生と1名の卒研生の献身的な研究の結果、全く新規の機序でタイトジャンクションを強化する薬剤・減弱させる薬剤および関連するシグナル伝達系Wntを阻害する化合物、マグネシウム輸送に関わる特殊なタイトジャンクションに関わる新規化合物、新型コロナウイルスの増殖を抑制する低分子化合物などを発見することができました。

それ以外にも、これまでに、私たちのグループでは、新規のタンパク質フォールドの立体構造決定2例に成功し、新規のタンパク質ドメインの立体構造決定3例に成功し、新規のタンパク質断片から細胞膜透過活性ペプチドを単離し、新規のプラスミドの方向性クローニング法を確立するなど、「世界初」の業績をたくさん達成してきています。さて、そういった「世界初」の発見・発明の現場に立ち会うと、多くの学生さんや一部のポスドクの人は、「自分の現在やっていることを文献検索しても、参考論文が出てこない」という事態に直面して、「これでいいのだろうか」と不安になるようです。「世界初」なのだから当たり前なのですが、そんなに簡単に自分が世界初になると想定していなかったのでしょうね。そういう時に、前例がないからと言って立ち止まってしまってはいけません。科学的な論理が行きつくところであれば、世界初であろうと、常識はずれであろうと、論文発表するのが科学者の使命なのです。その勇気を持つために、日頃から論理的思考を磨くことを怠らないでください。

NMR構造生物学の魅力

NMRを用いたタンパク質の解析は、手間がかかり、またとても地味なので、X線や電子顕微鏡のような華々しい研究とは無縁になりがちです。ですが、限定された領域ではとても強いのも事実です。一つは非常にフレキシブルな分子を観察する場合(天然変性タンパク質など)。一つは弱いけれども特異的な相互作用を観察する場合。一つは小さなタンパク質ドメインの立体構造決定(水溶液中や有機溶媒中)。一つは多くのコンポーネントが含まれている混合物中の構造変化。これらの特徴が、創薬には実にマッチしているのです。安定同位体標識などの工夫を重ねれば、その制限・限界もどんどん広がります。でも、それには、原理や応用事例に対する幅広い知識と好奇心が必要です。ぜひ、構造分子薬理学分野に来て、NMR創薬の専門家を目指してください


キーワード:蛋白質-蛋白質相互作用、ドメイン解剖学、自動帰属、立体構造計算、構造生物学、蛋白質科学、産学連携


趣味 :釣り・スキー・試薬メーカーのカタログを読むこと・読書(ライトノベル+推理小説+時代小説)・透明な果実酒の収集

Updated: 2021/04/09 — 22:32