指導方針
「2~3年の期間中(卒研→修士修了まで)にリード・シード・新規化合物を1つ、または特許を一つ、または英文原著論文一報以上」を目標とします。
- 研究に貢献した人は、学部学生・修士学生であっても、その貢献に応じて、原著論文の著者にします。貢献の少ない人が、高い順位で論文著者になることはありません。
- また、発明に貢献した人は、特許出願の際の発明者になってもらいます。これまでに廣明研から出願した特許の発明者に、卒業生4名の名前が含まれています。
- 卒研生のサークル活動による、平日日中の研究室の不在は、原則として認めません。
- 卒研生・修士学生の平日の業務時間帯のアルバイトは、原則として認めません。土日に行える範囲としてください。その代り、学会などを除いて土曜日に研究室の公式の行事は開催しません。
- 当研究室では「ひとつの共通なテーマを複数の人が分業して進める」というようなスタイルはとりません。
- 博士課程やポスドクの学生に、指導の名目で、修士学生を「手下」「助手」のようにつけるようなこともしません。
- 研究のコア部分は絶対に本人が出したデータにもとづく、ことを徹底します。先輩・後輩・スタッフが行った研究結果を流用して卒論・修論を作成することは認めません。
- 目標:基本的に一人でなんでもできる研究者を育てる(遺伝子工学・試料調製・NMR測定から結晶化や構造決定、細胞生物学まで)。必要に応じてメンター・経験者が部分的に手助けはしますが一人で自主的に研究を進めるスタイルにします。
- 修士論文(日本語)・英語原著論文執筆・論文読解・プレゼンテーションの指導は徹底的に行います。
- とくに論文執筆の構成力を鍛えたい学生のために、マインドマップの活用を推奨しています。
- 学振や奨学金などの申請も、丁寧にフォローします。
- 教授は外資系製薬企業の勤務経験があります。製薬企業への就職活動は特に丁寧にフォローします。
テーマ一覧
卒研生・大学院生の方と一緒に進めていこうと思っているテーマ。以下のいずれかの分野に関連する疾病関連またはヒト・マウス由来蛋白質を中心にしてテーマを決めます。基本的には本人の希望を尊重しつつ話し合いで決める方針です。
廣明テーマ
- 【タイトジャンクション創薬】 [特許出願中]
細胞接着蛋白質・その裏打ち蛋白質・タイトジャンクション・脳血液関門の分子機構をNMR構造生物学を用いて解明し、その知見を高度に利用して医薬品シーズ(医薬品吸収促進剤・皮膚バリア機能改善剤・がん転移抑制剤)の探索・開発を行います。現在、NMR構造解析をおこないつつ、細胞を利用して当研究室で得られたシード化合物を評価し、第3世代化合物の設計をテーマとしてくれる学生を募集しています。
(生理研・古瀬幹夫教授との共同研究) ZO-1, LNX1, claudins, JAM, LSR, other PDZ-domain proteins
(千葉大・伊藤素行教授との共同研究)Dvl阻害剤 - 【新素材としての天然変性タンパク質の物性研究と医療への応用】 [特許出願中]
天然変性タンパク質の構造解析とバイオインフォマティクス・次世代医療への応用
(名古屋大情報科学研究科 太田元規教授との共同研究) - 【認知症・脳神経変性疾患の研究】
アルツハイマー病高毒性タンパク質凝集体[アミロスフェロイド・ASPD]の阻害薬の合理的設計に関するプロジェクト(京都大星先生との共同研究を中心に)
βアミロイド重合阻害薬の天然物・食品由来成分からの合理的スクリーニング(情報科学研究科・吉田久美教授との共同研究)
AAA-ATPase阻害剤の合理的創薬、特にカタニン阻害薬と、繊維形成能を低減させたTauを積極的に活用した微小管保護に基づく神経細胞死の回避(東京医科歯科大・伊倉先生との共同研究)
兒玉テーマ
- 次世代核酸医薬品(新規の糖部骨格を有する人工核酸を利用した次世代アンチセンス医薬品)の開発研究 [人材募集中]
- 次世代核酸医薬品(コンフォメーションを固定した人工核酸を利用した次世代アンチジーン医薬品)の開発研究 [人材募集中]
- 核酸医薬品の次世代ドラッグデリバリーシステムに資する修飾核酸の分子設計 [人材募集中]
天野テーマ
- 【自己免疫疾患・ALS・緑内障研究】 翻訳後修飾因子(ユビキチン・SUMO)が関与する膜輸送・オルガネラ制御に関連する構造生物学 (NEMO, OPTN, PEX19)
- 核小体タンパク質ヌクレオリンを介する経路を利用するアプタマー医薬品の開発(兒玉・天野共同テーマ)
兒玉・廣明共同研究テーマ
- RNAseH1の研究
理学部生命理学科の卒研志望の学生さんへご注意(サークル活動などへのご注意)
創薬科学は、ヒトに臨床にて使用する医薬品を開発するための一連の研究であり、最終的に人の命を預かる仕事です。そのことを真摯に理解し、真剣に取り組む学生のみを受け入れたいと考えます。そもそも、創薬科学という学問分野は、生命科学と化学の境界領域であるため、薬学部の基礎教育を受けていない学生にとっては、学ぶ範囲が大変広く感じられると思います。しかし、国内の製薬関連企業からの名大創薬の卒業生への期待は大変高いため、その期待を満たすべく、真剣に学業に取り組まなければ中途半端な専門性のままになってしまうことが懸念されます。
理学部生命理学科から卒研で構造分子薬理学分野を志望した何人かの学生さんに聞いたところ、構造分子薬理学分野は理学部の他研究室と比較して、かなり厳しい(忙しい)ブラックな研究室なのだそうです(あくまで学生個人の意見です。廣明・兒玉とも、意識して比較したことはありません)。サークル活動や長時間労働が必要なバイト(塾講師・家庭教師を除く)は、当研究室における卒業研究とそれら課外活動は両立しませんのであらかじめご了承の上、志望してください。また、これまで触れたことのない、いわゆる生物学とは分野が違う原著論文についても、最新情報を得るために英語で読解しないと、プロにふさわしい専門的知識は身に付きません。英語力に自信がない、英語の論文を読むことが苦痛である、という学生さんには、お勧めしません。